手のひらで鳴り響く

「遊園地に行こうよ。鈴ちゃん」
めんどくさがり屋の彼氏からデートに誘ったのは初めてのことで、驚きながらも胸を躍らせてその日を迎えたのだったが・・・
「昭二!」
「ん?何、鈴ちゃん」
遊園地内で遊んで数時間、トイレに行ってくるねと言って出てきたら、てっきり出口の近くで待っているものと思っていた人物はトイレから離れたベンチに座ってのんびりとこの遊園地メインの観覧車を見つめていた。その姿ははぐれたと思い必死になって探していた自分の労力を返してほしいと思う。
「探したんだから」
頬を膨らませてちょっとだけ怒りをすると昭二は笑うと膨らんだ頬をつつかれた。

「人の邪魔にならない所で待ってようと思ったんだよ。鈴ちゃんだってトイレの前に出待ちされたら微妙でしょ?それとも俺に女子トイレで出待ちされたかった?」

ズイッと顔を寄せ、昭二はにっこりと笑う。端整な顔が急に近づいてきたので私は一気に体温が上昇するのを感じた。おそらく顔は真っ赤だろう。
「あ、いや・・その・・」
しどろもどろになりながらも本当に昭二が出口で待っていたら・・と少し想像してみると、男の子がトイレの前で待っているというのは、ただでさえ端整な顔立ちで周囲の目を引くし、男の子としても微妙だろう。というよりも・・・私が恥ずかしいかも。
「じゃあ、今度は女子トイレの前で待っててあげるよ。」
私の心配をよそにどこか楽しそうに昭二は言った。その楽しそうな笑みがどこか意味深でなぜか、嫌な予感がした。
「いい!!いい!!ベンチで待ってて!!」
慌てて答える私に昭二は笑う。どうやら冗談のようだったが、私の反応がとても楽しかったのだろう。満足そうだ。
「そう?残念」
とポンと頭に手を置かれた。昭二と私は同じ年なのにこういう時は自分が年下かと思ってしまう。ホント、私の彼氏は私を本当に彼女と思っているのだろうか?
「何してるの?ほら、行くよ」
考え事をしている中、声に気づけば昭二はいつの間に私の目の前から離れ、歩き出していた。
「ま、待って!!!」
慌てて追いかける。待ってくれるという考えは昭二の辞書には載ってない。学校ではそうでもないけど仲が良くなるにつれて昭二は自由人なんだと思う。世の中のカップルの中で私達のようなカップルは・・・珍しいんだろうなぁ・・・。そんなことを考えながら、私は昭二の元に急いだ。 昭二の足は真っ直ぐと観覧車に向っていた。近づくに連れ、その大きさに眼を引く。 観覧車はこの遊園地のメインで、乗り場は大変混雑していた。
「うわ〜・・・すごい人、他のに乗る?」
と提案したがそれを綺麗にスルーした昭二は列の最後尾に並んだ。
「ねぇ、前、人ごみキライって言ってなかったけ?」 私が散々こんなレジャー系の所に行こうとデートに誘っても、
「人が多い」「面倒」「無駄」の三拍子だった人がわざわざ最後尾・・・係員のプレートを見れば60分待ち・・・普段では考えられない行動・・・直感する、何かある。私が何を考えているのか表情を見て気づいた昭二が溜め息をつく。

「ひどいなぁ・・・それでも乗りたいって思う俺の「やさしい」気持ち分からないわけ?ふ〜ん・・・」

あ、眼が・・やばい。据わってる。
「ううん!!うれしいなぁ!!!もう門限が危ないからこれで最後かな」
「そんなギリギリなっても乗りたいんだ。あ〜よかったね、俺がすぐに並んであげて。鈴ちゃんがモタモタしてるうちに結構並び始めてるし。門限すぎちゃうよ」
「・・・・エエソウデスネ」

学校ではまず見せない、私だけの意地悪な態度に泣きたい気持ちを抑え、私は込み合っている列に入った。
Copyright(C)2009 来風 All rights reserved.
a template by flower&clover